エンターテイメント - 小説
TRUST 第3話「交代」

作者:ルーキフェル・A・ラズウェル



「ファラの新しい技?」
「そう、新しい技!手伝ってやってくれ。」
「お願い、メルディ。」
「はいな。メルディ何すればいいか?」
「ファラが敵にな・・・」
リッドが耳打ちした。
「・・・・」
「おーい!リッド達ー!行くぞ!早くしろ!」
「う、うん、今行く。待っててキール。」
「分かったな、メルディ?決まればかなりの攻撃力になる。」
「分かったよう。まかせてな。」
「汝ら、敵の城の中だぞ?気を抜いている暇などないんだぞ!」
モーシェは少しいらだちを見せた。
「よいではないか、モーシェよ。この階はもうモンスターはおるまいて。」
にっこりとゼクンドゥスが微笑む。悪気はなかったのだが、リッド達は謝った。
「ごっごめんなさい。」
「次の階へ急ごう。」
モーシェは、早々に階段を上っていった。しかし、上っていった部屋にはモンスターが一匹しかいなかった。
「はあぁん?てめぇ一匹か?」
リッドは拍子抜けをしながら言った。
「ふっ、まさかな。」
鼻でキールは笑った。
「・・ふはははは!笑止!私は、正面からの戦を好む。ザコを使って勝つのは弱き者がやることだ。我々は、高きなる戦を好むのだ。」
「ちっ、ちがう!今までの奴らとは違う!気を付けろ!」
モーシェが叫んだ。
「我が名はアポリオン。攻撃力を司る者だ。行くぞ!」
「我が名はモーシェ。汝と一騎打ちをする!」
「なっ、何ぃ?」
リッドとキールは、モーシェのほうを見た。
「行くぞ、アポリオンとやら。光弾よ、敵をうて!光魔烈弾!!」
指先から「レイ」によく似た光の矢をうった。
アポリオンは、腰に剣を差していたが、剣を使わずに素手で光の矢をつかみ、握りつぶした。
「ふんっ、かわすまでもない。ではこちらからも行くぞ!砕!!」
アポリオンは、腰に差した剣を勢いよく引き抜いて剣圧と共に切り込んだ。すると、なんと切った壁に直径2メートルほどの剣圧によるへこみができてしまった。
「すっ、すげぇ・・」
リッドは剣圧のすごさを見て、思わず声を上げた。
しかし、モーシェはアポリオンに距離を取るように走り、呪文を唱えた。
「ならば、これでどうだっ!」
モーシェは、顔前で指をおどらせた。
「ルーイ・エリ・グレスコル・ルビー・汝黒き魂にて我を清めたまふ。おお冥王よ!至高なる者の強き集いの内に我は死の凍嵐を身に纏いたり。新たなる契りによる氷雪の力、今、束ねん!」
モーシェは手のひらを合わせて魔力を集中させた。モーシェの周りからの冷たい凍気により、周囲に白くけむりが立ち、氷が割れるようなピキーンと言う音がした。そして、手のひらを合わせたまま、アポリオンに向けて言い放った。
「絶対零凍破!!」
白い雪のような魔力を飛ばした。
「フン!我が剣に宿りしアバドンの人々よ!全てを焼け、炎よ!全てをなぎ払えっ!」
アポリオンは、剣に向かって叫んだ。すると、剣は真っ赤に燃え上がり、魔法を蒸発させてしまった。
「なにィ」
モーシェは叫んだ。無理もない。絶対零度の呪文を蒸発させたのだ。
「なかなかだな、絶対零凍破とはな。しかし、私は剣の他に、炎の呪文を得意とするのだ。」
「くそっ!」
モーシェの顔から冷静さが無くなった。
「モーシェ!無理するな!力を合わせて戦うぞ!」
「だめだっ!私は汝らを全ての攻撃から守りゼウスの元まで連れて行く義務がある!刺し違えても奴を倒す!」
モーシェは新たな呪文に集中した。
「火には火だ!ブーレイブーレイ・ン・デード・血の盟約に従い、アバドンの地より来たれ。ゲヘナの火よ、爆炎となりて全てを焼き尽くせ!」
「私と爆炎で勝とうというのか?笑止!」
アポリオンはモーシェと同じ動きをしながら呪文を唱え始めた。
「ブーレイブーレイ・ン・デード・血の盟約に従い、アバドンの地より来たれ。ゲヘナの火よ、爆炎となり全てを焼き尽くせ。」
二人は呪文の詠唱を終えた。
「炎魔焦熱地獄!」
地獄から呼び寄せた炎を身にまとい、ぶつかり合った。
「ぐうぅっ、ま、負けん、負けるわけにはいかんのだ!」
二人の背後に亀裂が走る。強力な炎の衝突により、部屋の内装が燃える。お互いの威力により、反発力が働き、二人は壁まで吹き飛ばされた。
「ぐおおぉ!私と同じ威力だとぉ!?」
ふらふらと立ち上がりぶつぶつと何かを言っているモーシェは我に返ると、すぐさま新しい呪文を唱え始めた。
「ジ・エーフ・キース・神霊の血と盟約と祭壇を背に我は命ず!雷よ!落ちろ!」
部屋の窓が割れ、見えた空から天空全域の電気エネルギーが集積していく。その強大なエネルギーは放電現象のみならず、魔法の有効範囲内の空気を雷化(プラズマ化)させた。
「轟雷!」
ピーンという耳鳴りとともに、インディグニションの数倍はあろう雷撃がアポリオンめがけて放たれた。アポリオンは、断末魔とともに爆発した。
「ワイール!スゴイな!」
「ああ、すごい雷の力だ。晶霊や大晶霊のレベルじゃない。まさに古代の魔の力だ。」
キールはごくりとつばを飲んだ。
「・・・私って本当に出番ないな・・」
ファラはむっとした顔をした。
「オイオイ、そんな話をしている場合か?」
と突っ込みを入れた。
「私は少し疲れた。汝ら、先へ行っていろ。」
「大丈夫、モーシェ?ミックスグミ食べる?」
ファラは心配そうに聞いた。
「だ、ダイジョウブだ。さっさぁ、先に行ってろ。」
今にも倒れそうなモーシェにキールは近づいた。
「いいから見せてみろ。・・・なるほどな。先ほどの炎をまとった攻撃が双方に大きなダメージを与えたらしいな。」
「大丈夫か?モーシェ、無理すんなよ。ケガなしでゼウスにたどり着けるとは思ってないからさ。」
リッドはモーシェに言った。モーシェはぐらぐらとした。態勢が崩れ、肩膝をついた。そして、立ち上がろうとした時、死んだはずのアポリオンが立ち、突進してきた。それにいち早く気がついたのはメルディだった。
「バイバ!よけて!」
同時にファラはアポリオンに拳を振り上げたが、少し遅かった。
「キャー、モーシェー!」
ファラは叫んだ。振り上げた手を頬に当てたまま叫んだ。床にはおびただしい量の血がたれていた。
「キ、キールゥー!」
メルディは耳をつんざくばかりの大声で叫んだ。一瞬だった。メルディが叫んだとき、キールはモーシェの前に仁王立ちし、アポリオンの剣を受けた。そう、ほんの一瞬であった。リッドはすかさず動き、アポリオンを蹴り飛ばした。その勢いでキールの身体を抜き出した。
「ぐっ、忘れていたのか?我々は再生するのだぞ?」
「てぇやああぁ!」
ファラは殴りかかった。
「連牙弾!」
ファラは連続で攻撃した。しかし、ほぼ受け止められた。
「くはは、ただの攻撃では死なんぞ。・・何!?」
ファラは左回りに振り返り、技をつなげた。
「獅子戦吼!」
アポリオンを闘気により吹き飛ばした。
「メルディ!アレを!」
「はいな!」
メルディはすばやく呪文を唱え、ファラはアポリオンの真上へ飛び跳ねた。
「何をする気だ!」
アポリオンはファラの方を見上げた。その瞬間に技を使った。
「鷹爪蹴撃!」
ファラは急降下しながら攻撃をした。
「そんな攻撃たやすく・・!?」
「ライトニング!」
ファラと同じタイミングでライトニングを唱えた。そう、協力技である。
「雷神獄雷破!」
雷撃の威力とともにファラは攻撃した。
「キール、ファイアボールな。」
急にリッドが指示を出したが、キールは倒れたままだった。
「私に任せろ!いくぞっ、テトラスペル!」
炎が空中に現れたそのとき、リッドは紅蓮剣の応用で剣に炎をまとわせて投げた。と同時にアポレオンの体はテトラスペルのグレイブと同じ呪文により、体が浮いた。
「な、なんだこの魔法は!?剣!?止めねばっ!」
アポリオンは、空中で印を結び、呪文を唱えた。
「小烈爆破!」
手のひらから数個の小型爆弾を作りはなった。ボンッという音と共に爆発したが、全て外れた。しかし、数回の爆風により失速し、威力が落ちてしまった。だが、それも読んでいたかのごとく、テトラスペルのライトニングが剣に当たり、回転スピードを上げた。
「くそっ!」
アポリオンは、顔と首を守るために腕をクロスさせた。
「まだまだぁっ!」
ファラは、剣とは反対方向から走り、ジャンプした。そして、剣とすれ違う瞬間、体をひねりながら剣の柄に手を当てた。
「掌底破!」
ファラは剣の柄へ特技を使い、より速い回転にして剣を飛ばした。アポリオンは、防御のために腕を上げたが、遅かった。
「見事だ!さぁ進め!先へ!そして地獄を見るのだ!」
アポリオンの首が飛んだ。
「メ、メルディ」
かすれた声が聞こえた。
「何か?キール?」
呼ばれてメルディはすぐさまキールの近くに寄った。
「メルディ・・みんな、ごめん。あとは・・ゴフッ」
キールは血と共に咳払いをした。
「あとはた、頼ん・・だ・・よ・・・」
そう言い、ゆっくりと目を閉じて深い眠りについた。
「キール?キール!目を開けるよっ!キール!イヤッ、起きるよキール!!」
メルディは大きくキールの体をゆすったが、キールは起きなかった。ポタポタと涙を流した。
「キール・・・」
ファラは下を向きながら両手に握りこぶしを作り、泣くのをこらえた。
「くそっ!」
リッドの顔にも怒りの色が見えた。
「クキュー?」
クィッキーはメルディの肩に乗り、メルディの頬を流れる涙をなめた。
「すまない。私が勝手なことをしたばかりに仲間を失うとは。」
モーシェは壁を見て、皆に背を向けた。
「非情かもしれんが、先を急ごう。」
ゼクンドゥスは、全員をまとめ、進むことを提案した。
「うん。そう、そうだよね。先に進んでパパッとゼウスを倒しちゃお!それでセイファート様に言えば何とかなるかもしれないよ!ねっ、モーシェ。」
ファラは元気なそぶりでしゃべりだした。
「そうだな、我々の神、セイファート様だ、何とかしてくれるかもしれん。」
目をつぶったままのキールを見てモーシェが言った。
「うんっ、イケるイケる!さっ、行こっ!」
ファラは次の階段を、リッドの手を引いて上っていった。
「メルディよ。後は私が見ている。先へ行け。少し疲れたしな。」
メルディは右手の服の袖で涙を拭いて立ち上がった。
「行こっ!ゼクンドゥス、クィッキー、ファラ達に追いつくよ。」
クィッキーを肩に乗せて階段を走りながら上った。
「モーシェ、汝はなぜ?」
ゼクンドゥスは聞いた。
「聞くな!先へ行け。後のことは任せろ。すぐ追いつく。」
モーシェはキールを見たままつぶやいた。
「・・・分かった。」
ゼクンドゥスは階段の方へ走っていった。

To Be Continued...



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