「来たか、ゼクンドゥス。こっちはもうお出ましだぞ。」
リッドは、階段を上ってきたゼクンドゥスに一言かけた。
「もー、いつまで待たせるの、キミ達?ボク本当にオコりますよ!」
見た目10〜13歳くらいのエルフらしき女の子が立っている。手には、簡単な装飾が施されている杖を持ち、小説に出てくるドラキュラみたいなマントをつけた変な女の子だ。しかも、
「ブッハハハハ!なーんかどっかで見たことあるようなガキだな。まさか?…ボウズ、お前が四天王か?」
キールのことを忘れようと必死で笑ったリッドを横目に、
「ムッ、ボクは性別上女なんですが!失礼な人たちですね!」
!!
一同は聞き覚えのあるセリフを聞き、笑い出した。
「ワイール!チャットがそっくりな言葉だな。」
「ウッククク」
リッドとファラは、おなかに手を当てて必死に笑いをこらえていた。
「笑っている場合ではないのではないのか」
真顔でゼクンドゥスが笑いを止めようとした。
「ごめんごめん。だって…フフフ…チャッ、チャットにそっくりな言葉遣いだからおかしくて。」
ファラは笑いをこらえながら謝った。
一方そのころバンエルティア号の甲板では・・・
「クシュン!」
「どうしたボウズ?カゼか?好き嫌いばっかりしてっからだぞ!ぐはははは!」
いつものように豪快な笑い顔のフォッグにチャットは言った。
「だからボクは女です!本当に失礼な人ですね!よくあなたのような人に女性がついてきますね。ボクは理解できませんよ!」
チャット達二人は、理由も分からずリッド達の帰りを待っていた。
「おぅ?…こまけぇ事言うじゃねぇか。ボウズ、酒持ってこい!酒!ぐはははは!」
「んっとにもう!それにしてもリッドさん達はどこに行ってしまったんだろう。」
チャットは心配しながら空を見上げた。
「ククククッキュキュ!」
クィッキーも丸まりながら笑った。
「変なケモノまで…もうオコったぞ!」
女の子は手を出し呪文を唱え始めた。
「我を守りし時空の障壁よ。今こそ我の前に出でて盾と成れ!」
だが、女の子の近くには盾は現れなかった。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。ボクの名前はカイ。」
なんともまあ男っぽい名である。
「俺はリッド。ヨロシクな!」
リッドは丁寧に自己紹介をした。
「では、魔神連牙斬!」
リッドはいきなり剣を抜き、技を放った。無数の魔神剣がカイを襲った。その瞬間、カイを包むように空間がゆがんだ。そして、全ての魔神剣が違う方向に飛んでいってしまったのだ。一つは真上、一つは右へ、もう一つは左上の方へ飛んでいった。目を凝らせば、まるで何かの丸いカプセルに包まれているみたいだ。ゼクンドゥスは「何か」に気付いた。
「なるほど。ディストーションか。」
「なぜか?ディストーションはゼクンドゥスが技。自分に技をかけることができるのか?」
「できるわよ、メルディ。『時の晶霊』ならどこにでもいるし、本来大晶霊のゼクンドゥスだけが独り占めできる『物』じゃないのよ。」
ファラがメルディに説明した。
「そういうことです。僕には一切、攻撃は効きませんよ。」
自身ありげにカイはリッド達に言った。
「それはどうかな?私と一対一で戦ってみるか?」
ゼクンドゥスがリッドより一歩前へ出た。
「?いいんですか・・・貴方理解してますか?僕には攻撃が通用しないのですよ。」
「フン…テトラスペル!」
三つの魔法、火、雷、土が、カイめがけて放たれたが、やはり効かなかった。
「アハハハハ!無駄無駄!くらえー赤斬光波!」
カイの眼前に魔力が集まり、切断性のある赤い光線が放たれた。しかし、ゼクンドゥスは造作もなくひらりと空中を飛んだ。
「やはりな。」
そう言い、ゼクンドゥスは地上に立った。
「もう一度今の技をやってみろ。」
「何度でもやってあげますよ!赤斬光波!」
同じ赤い光線がゼクンドゥスを襲った。
「いいかリッド達!奴のディストーションが取れたら即座に攻撃しろ!」
「多勢に無勢?」
「いいから!」
ゼクンドゥスはすばやく魔力を集め、放った。
「ゼクンドゥス・レーザー!」
カイの赤斬光波を押し戻した。
「ぐっぐう・・ま、まさか!?」
カイは必死に、戻ってくる自分の光線をもう一度押し戻そうとこらえている。
「その通り。そのシールドの弱点は、自分が攻撃できないことだ。そして、攻撃するには、自分で「穴」をあけてその「穴」より攻撃する。一見ディストーションのコート(包護)は無敵だが、それこそが弱点なのだ。」
その時だ。お互いのすさまじい力場の反発により、大爆発が起こった。
ズドオォォォォン!!
爆音と共にすなけむりが立った。
「今だ!」ゼクンドゥスが声を上げた。
「獅子戦吼!」
「くっ!」
カイは腕をクロスさせてガードした。すかさずリッドが
「虎牙破斬!」
カイに向かって勢いよく切り込んだ。
「させないよっ!光輪の盾よ!出でよ!」
すばやくリッドの剣筋に、両手で光の盾を張った。
ガキイィィン
激しい金属音が鳴り響いた。その直後、カイの後ろでフッと言う風を切る音とバサッとマントの動く音がした。
「『Timeorbaptism(刻の洗礼)』!!」
双撞掌底破の形でカイの背中に一撃を入れた。それと同時にメルディは詠唱を始めた。
天光満つる所に我は在り
黄泉の門開くところに汝在り
聞こえし声は闇より来たり
闇の声出す者は人か?魔物か?
開け!闇の扉!
「ブラッディハウリング!」
メルディの背後から黒い闇が広がり、この世とは思えぬ声を上げた。
「フン。その程度の呪文ですか?」
「僕のシールドには無力ですよ・・・!?」
カイは何かの違いに気付いた。
「その通り。汝のディストーションはもう使えない。」
「まさか!さっきの一撃は!?」
「忘れたか?我は時の大晶霊だぞ?ディストーションを使えなくすることなど造作もないことだ。」
メルディのブラッディハウリングが襲いかかる。
「うわああぁぁぁぁーー!」
「声」が真空の鎌鼬のようなものとなってカイにダメージを与えた。刹那リッドが動く。
「空破絶衝撃!」
リッドは鋭い突きを入れた。
「くっ・・・ひっ飛翔黒鳥翼!」
カイの体がふわりと空中へ飛んだ。流石にカイは息を切らしている。
「汚いな、キミ達は!一人相手に四人ですか?」
「うるさい!仲間を失ったオレ達の気持ちが分かるか!」
リッドは大声で叫んだ。
「・・・ええ、分かりますよ。あなた達が殺した四天王!僕の仲間ですよ!」
カイは目に涙を溜めた。
「だが・・・戦いは戦いだ。お互い引けないのだ。」
ゼクンドゥスが手に魔力を集中させ始めた。
「・・・・」
どの道不利には変わらないカイは、ゼクンドゥスの攻撃を覚悟した。
「フ・・ククク。お互い引けないか?人間は実に面白い。互いに自らの正義を賭けて戦うか。次は私と力を交えるか?」
その場の空気が変わった。まるで、氷に囲まれたみたいに視線を感じた。
「大丈夫か、カイよ?」
カイの目の前に黒い点が浮かび上がり、一ヶ所に集まった。すると、なんとそれは人の形になり始めた。黒い影に覆われた中から、銀髪の長い髪に、王族を思わせる白く見事な顔立ち、青く冷たい目、そして魔導士のような長く黒いマント、そしてその腰からは紫色の剣の柄が見えた。
「スミマセン。」
カイは男の白い顔を見ながら謝った。
「気にするでない。そこの人間達よ。上へ来い。」
そう言い残して消えた。
「一体何者だ?かなりヤバイ感じだったぜ?」
リッドは顔に汗をたらし、みんなに聞いた。
「スゴかったな。とても強い魔力感じたよ。」
メルディが言い、ゼクンドゥスもうなずいた。
「早く上へ行きましょう。戦ってみなくちゃ何も始まらないわ。」
一行は、カイを素通りした。メルディがすれ違いに
「ゴメンな。」と言った。
そして、上への階段を上った。見事な装飾が施された部屋に、黒いマントの背がこちらを向いていた。
「よく来た、人間よ。自己紹介をしておく。私の名は・・・」
To Be Continued...